肝細胞癌、殆どの人が無症状です!

消化器科医師  堀内 克彦

 日本では年間約5万人が肝疾患で死亡しており、その約2/3が肝細胞癌、残りの大半が肝硬変です。肝細胞癌の約8割がC型肝炎ウイルス持続感染者(HCVキャリア)、約1割がB型肝炎ウイルス持続感染者(HBVキャリア)から発症しています。 肝疾患の死亡割合グラフ
C型肝炎は、血液を介して感染し高率に慢性化し(60-80%)、慢性肝炎は20-30年の年月を経て肝硬変へ進展します(30-40%)。病変(線維化)の進行とともに発癌率が上昇し、肝硬変の推定発癌率は10年で70-80%と言われています。C型慢性肝炎の治療は、新しいインターフェロン(IFN)製剤(コンセンサスインターフェロン、ペグインターフェロン)の登場やリバビリン(抗ウイルス剤)併用療法により有効率が上がりました。現在当科では、亜鉛製剤を併用することで有効率が更に上がるか検討する自主研究を行っています。

B型肝炎は、血液と分泌液(性行為)を介して感染し、成人初感染(大半が性行為)では慢性化することは稀ですが (1%以下)、重症化、劇症化に注意が必要です。HBVキャリアの殆どは母子感染(垂直感染)であり、その他4歳以下の水平感染(医療行為や家庭内)が原因のこともあります。HBVキャリアの多くは15歳から35歳までに肝炎期を経て落ち着きますが、約10%の症例で肝炎が持続し、年月を経て肝硬変へ進展します。
肝硬変の推定発癌率は10年で30-50%前後ですが、肝機能が正常なキャリアや慢性肝炎からの肝細胞癌発症も稀ではありません
B型慢性肝炎の治療は、ラミブジン(抗ウイルス剤)の登場により今までにない高い高い抗ウイルス効果、肝炎沈静化効果が得られるようになりました。今後も新しい抗ウイルス剤が登場する予定です。


 肝細胞癌は、癌ができやすい状態の肝臓(慢性肝炎や肝硬変)から発生するため、肝臓内の他部位からの再発(異所再発)が多いのが特徴です。当科では、癌の進行度や肝予備能、全身状態などを総合的に考慮し、主に下記の治療を行っています(治療には下記以外にも外科的手術、免疫療法、放射線療法、肝移植などがあります)。 イラスト

◎ラジオ波熱凝固術(RFA):
適応は3cm程度3個以内。専用の針を刺しラジオ波で熱を発生させ癌細胞を殺します。3cm程度まで1回で治療でき、直径2cm程度のものであれば1回の治療で外科的切除と同等の局所治癒が期待できます。

◎肝動脈塞栓術(TAE)、肝動脈薬物注入療法(TAI):
適応は外科的切除やRFAができないもの。カテーテル(細い管)を足の付け根から肝動脈に進め、抗癌剤動注や動脈の塞栓を行います。1回の治療での局所根治率は高くなく、繰り返し治療が必要となります。

◎リザーバー持続動注化学療法:
適応はび慢性や多発性の進行したもの。足の付け根や左の鎖骨の下から肝動脈内に薬を注入するカテーテルを植え込み、持続的に化学療法を行います。インターフェロンを併用する場合もあります。

◎全身化学療法:
適応は肝臓以外に転移のあるもの。点滴と経口投与があります。インターフェロンを併用することもあります。

※肝細胞癌について簡単に説明しました。詳しいことは消化器科へご相談下さい。






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