タイトル


小児科医長  菊池 修

 今回、世界でもユニークな日本の学校検尿についてお話します。 なお、ここでは、小児期に多い病気についてお話します。成人では小児と違う病気が多いということをあらかじめおことわりします。
 学校検尿では、尿中に、蛋白赤血球(いわゆる血尿)、白血球がでているかどうかの検査が行なわれています。
 まず、蛋白尿ですが、一般に起立性蛋白尿、体位性蛋白尿が多く、動いたり立っていたりすると蛋白尿が出やすい状態です。将来的に腎臓が悪くなることはありません。まれに、ネフローゼ症候群や腎炎といった治療を必要とする病気が見つかることもあります。  イラスト1
また、蛋白尿と血尿が両方みられる場合は、腎炎の可能性が高く腎臓専門医の受診をお勧めします。ただ、風邪をひいたり、熱が出ている時に、尿に蛋白や血尿が軽度出てもすぐに異常ではないのでご安心ください。
 血尿では、無症候性血尿(あまり将来的に問題とならないものです)、家族性血尿(ご家族にいつも検尿検査で血尿を指摘されている方がいる場合に多い)が多くあまり心配ありません。しかし、まれに腎炎、特にIgA腎症という病気の初期が見つかることもあります。症状としては、風邪や発熱時にコーラのような褐色尿がでて、これを肉眼的血尿と呼びます。このIgA腎症は、以前はあまり将来的に腎臓の悪化がないと思われていましたが、最近では腎不全となり透析が必要になる方もみられることがわかり、早期に治療を勧めています。
 次に、白血球尿ですが、尿道炎、膀胱炎、腎盂腎炎がみつかることがあります。また、女児では外陰炎もあります。ただこれらの病気は、ほかに症状があり、検尿以前に見つけられることがほとんどです。すなわち、尿道炎では排尿時痛が、膀胱炎では頻尿、残尿感、排尿時痛が、また腎盂腎炎では発熱、悪寒、背中の痛みです。
イラスト2  最後に、糖尿ですが、最近は小児でも生活習慣病が増え、ペットボトル症候群という言葉も聞かれます。糖尿病の早期発見に貢献しています。まれに、特に治療を必要としない腎性糖尿といって、腎臓から糖がもれやすい人も見つかることがあります。また、小児に特徴的な病気として、生まれつき腎臓が小さく機能が弱いとか、腎臓、尿管、膀胱の形に異常があり、よく腎盂腎炎を繰り返し腎機能が悪くなりやすい病気があります。
これらは、必ずしも検尿だけでは異常が見つかりにくく、お腹の超音波検査を病院でしてもらい、必要があれば他の画像検査を追加してわかることもあります。
 いままで、腎臓病についてお話しましたが、腎臓病は病気の名前、その特徴が理解しにくいのが現実です。腎臓は、ご存知のように尿を作って老廃物を排泄する以外、体液電解質の調節、ホルモンによる血圧の調節、貧血を改善させるホルモンの産生、ビタミンDの活性化、酸性アルカリ性の調節など、体に不可欠な働きを多く持っています。また、腎臓は3/4の障害がおきても、残った1/4の機能で日常生活に支障をきたさず過ごせる予備能を持った臓器です。そのため、症状がないから大丈夫と思われやすくもあります。検尿異常をいわれたら、必要以上に心配されることはありませんが、逆に病院を受診せず病気の悪化がないよう腎臓専門医に受診し、血液、尿、超音波検査をし、よくお話を聞いていただくことをお勧めします。






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