歯科主任医長 富澤 武 |
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激しい何の症状も無く静かに進行する。しかし歯を失う原因で最も多いのは歯周病なのです。 歯と歯周組織 歯は人体の中でもっとも硬い組織から出来ています。そしてその主な働きは食物を噛み砕くことにあります。食べ物を噛むには非常に大きな力がかかります。そこで、その歯をささえる重要な働きを担っているところが歯周組織です。図は歯と歯周組織の構造を現しています。普通お口の中で見えているのは歯冠と呼ばれる部分です。氷山の一角ほどではありませんが見えない部分、すなわち歯根は歯冠の長さの倍くらいの長さをもって、文字通り歯槽骨の中にしっかりと根を張っています。
歯周病とは 上に挙げた4つの部分にみられる病気、という事になりますが、原因や成り立ちによっていろいろな種類がありますので、ここでは最も多くみられる歯肉炎と歯周炎について、お話を進めて行きます。歯周病というのはまず歯肉から始まります。 【歯ぐきが赤く腫れている】 【歯ぐきから血が出る】 【歯がしみるようになった】等の症状が見られたなら、これはもう歯肉炎になっていると思った方が良いでしょう。しかしながら、この状態では炎症がまだ歯肉の部分にとどまっていますからまだ軽度の歯周病です。この炎症が更に進んで歯根膜や歯槽骨にまで及ぶと歯周炎です。【歯ぐきから膿が出る(歯槽膿漏)】 【歯が傾く】 【グラグラする】【場合によっては歯が抜け落ちる】等ということになってしまいます。 歯周病の原因で一番大きなものは、歯の表面、特に歯肉の近くについた歯垢と呼ばれる細菌の塊です。口の中はこの歯垢が成長するのに最適な環境です。細菌が増殖するのに適当な温度(体温)に水分(唾液)そして栄養分(食べ物)が充分に供給されるからです。このようにして勢いを得た細菌は一方でむし歯をもう一方では歯周病を引き起こすわけです。 歯周病を防ぐには このように歯周病というのは細菌によって起こるわけですから、お口の中を清潔にしておく必要があります。まずは汚さないようにする事が大切でしょう。歯にくっつきやすい食べ物には注意しましょう。よく噛むということも有効です。そして汚れを取り去ることです。今時“歯を磨かない”という人はまずいないでしょう。問題は“磨いている”と“磨けている”には違いがあるという事です。歯垢がつきやすいのは、歯と歯の間、歯の付け根、奥歯の噛む面にある溝などです。鏡を用意してよく観ると汚れは見えるものです。磨けていない部分は舌で触ってみてもわかります。そんなことを意識して歯磨きをしてみては如何でしょうか。 |