|
2005年春お元気ですか 第29号 2005年4月
|
|
|
|
|
|
副管理者兼院長 柴山勝太郎 |
|
一般に病院の中では毎日莫大な数の情報のやりとりが行われています。その処理 |
にはコンピューターの活用が不可欠ですが、病院でのコンピューターの活用は大変 |
遅れています。
|
|
医事会計の事務処理には、昭和50年代に多くの病院でコンピューターが導入され |
ましたが、日常の診療にコンピューターが導入されるようになったのは平成に入って |
からです。
|
|
当院では、平成2年にオープンした新病院の計画段階で、コンピューターの活用 |
により仕事の効率化をはかるため、トータル.オーダリングシステムを導入すること |
にしました。これは院内の診察室、検査室、薬局などをコンピューターによって結ぶ |
システムです。それまでは血液検査を受けるには伝票を持って検査室に行き、採血 |
が行われた後、結果説明を受けるため後日受診が必要でした。オーダリングシステ |
ムの導入により、患者さんは採血後30〜40分で検査結果の説明が受けられるよう |
になりました。診察の予約も出来るようになり、くすりや会計待ちの時間も以前に比べ |
短くなりました。 |
|
病院では、診察すると直ちにその内容をカルテ(診療録)に記録することが医師に |
義務づけられています。カルテには、患者の病状に関する全ての記録が残されて |
いる筈ですが、多忙なために落ちていたり、記録されていても他人には内容が判ら |
ないことが少なくありませんでした。厚労省は、平成11年に診療記録をコンピュー |
ターに残すこと(電子媒体化)を認め、医療の標準化や透明性を高めるため、電子 |
カルテにの導入を推進する方針を打ち出しました。 |
|
当院では、14年4月から電子カルテを使っています。既に3年を経過し、大分使い |
慣れてそのメリットが生かされるようになりました。患者さんは、自分の病状に関する |
記録や検査結果をパソコンの画面で医師と一緒に見ながら説明を受けることができ |
ます。 |
|
今日、わが国の医療制度は世界中で最も優れた制度と考えられていますが、厳し |
くなる一方の医療経済のもとでこのシステムを維持していくためには、医療機関相互 |
の役割分担(機能分担)が必要と考えられています。特に病院と診療所との間の機 |
能分担が重要です。 |
厚労省では、病院と診療所との間の連携を強化するために電子カルテを利用した |
ネットワークづくりを勧めています。 |
当院では地域医師会との間でインターネットを利用した |
|
ネットワークづくりを検討中です。 |
急速に進歩するコンピューター技術を医療の分野にとり |
入れるための努力は、今後ますます必要になるものと |
思われます。 |
|
|
|第29号TOP| |
|
|
|
|
|
|
|
企画情報課 課長 吉澤和雄
|
|
皆さんは、「病院機能評価」をご存知でしょうか。「病院機能評価」は、「日本医療機能 |
評価機構」 という第三者機関が、病院の業務が適切に行なわれていることを認定する |
制度です。それぞれの病院の医療行為はもちろんですが、院内の清掃からゴミの処理 |
に至るまで、病院が日常行っているあらゆる業務が評価の対象です。 |
577の項目について書類による審査と3日間に及ぶ現地の訪問審査を受け、この全て |
が一定のレベルに達しており、良い病院として認定されることを目指します。 |
|
最近では、製造に携わる会社などをはじめあらゆる会社や法人が「ISO9001(品質 |
管理マネジメントシステム)」や「ISO14001(環境マネジメントシステム)」を取得したと |
頻繁に耳にされたり、目にされたりすると思いますが、その病院専門版が「病院機能 |
評価」といえます。 |
|
当院の「病院機能評価」受審への取り組みは早く、平成12年9月に全国で9,000以上 |
ある病院の中でも184番目に認定を受けました。受審病院は、近年急速に増加してい |
て今年3月現在では、1,520の病院が認定されています。 |
|
「病院機能評価」の認定期間は、5年間です。当院も今年9月に認定の期限が切れ |
ることから、2度目の審査を6月に受けることになりました。 |
「病院機能評価機構」から求められる質のレベルは年々高くなっており、当院では、準 |
備委員会を組織して準備を進めています。この委員会活動も自院の業務を見直す良い |
機会となっています。 |
|
|
再受審をすることにより、当院もさらに質の高い |
医療を患者様に提供し、「患者中心の医療」 |
を充実できると思っています。
|
|
|
|
|第29号TOP| |
|
|
|
|
|
|
|
*緩和ケア病棟紹介 第4回(最終話)* |
|
いよいよ4月1日に緩和ケア病棟(PCU:Palliative Care Unit)が開設します。 |
公立富岡総合病院の緩和ケア病棟では『あなたらしく生きることを支えます』を |
モットーに、以下のことを病棟の方針にしています。 |
|
1.ひとりひとりの生き方や生活を尊重した緩和ケアを提供します。 |
2.住みなれた自宅での生活を継続的に支援します。 |
3.地域における緩和ケアの拠点として、地域の緩和ケアの質の向上に努めます。 |
|
緩和ケア病棟では、専門の医師・看護師・ソーシャルワーカー・薬剤師・栄養士・ |
理学療法士・臨床心理士などがチームを組んで一丸となってケアにあたります。 |
|
3月27日・31日に行われた緩和ケア病棟オープンデイには200人を上まわる地域 |
の方々にお越しいただきました。ありがとうございました。今後も皆様にご意見をい |
ただきながら、よりよい病棟にしていきたいと思います。 |
|
緩和ケア病棟に関するお問い合わせは緩和ケア病棟 津金沢理恵子までお願い |
いたします。 |
|
南棟の3階に緩和ケア病棟が完成しました |
|
|第29号TOP| |
|
|
|
|
|
|
|
平成17年4月から慢性呼吸不全で*在宅酸素療法【ホットHOT:Home Oxygen |
Theraphy】を必要とする患者様のために、HOT外来を開始いたしました。 |
|
近年、在宅酸素療法(HOT)及び人工呼吸器が必要な慢性呼吸不全の患者様には |
薬だけではなく、リハビリテーションや呼吸困難感に対する不安からくる「うつ状態」 |
など体と心を含めた包括医療が必要とされています。当院におきましても医師だけ |
ではなく、看護師、薬剤師、理学療法士等医療従事者によるチーム医療を行い、 |
慢性呼吸不全の特殊性を考慮しより、良質な医療を提供したいと考えております。 |
|
また、患者様のかかりつけ医の先生とも連携を図り、適切な医療情報を |
お知らせし体も心もHOTにする医療を目指しております。 |
|
|
|
※在宅酸素療法とは慢性呼吸不全の患者様が自宅で酸素吸入を行うことで、 |
外来通院しながら家庭で行う治療法です。 |
|
|第29号TOP|
|
|
|
|
|
|
|
|
産婦人科医長 伊吹令二 |
|
不妊症―子供のできない人は世の中に意外と多いものです。一般的に結婚して |
一年以内に約80%の人が、二年以内に約90%の人が妊娠していて、それ以後の |
妊娠率はきわめて低くなっています。当院婦人科外来に診察にこられる人の多くは、 |
結婚後5年から10年で、年齢では30〜33歳の女性が一番多いようです。そのうち、 |
原発性不妊症といって過去に一度も妊娠したことのない女性が75%、続発性不妊症 |
といって過去に一度以上妊娠経験のある女性が25%です。不妊原因を女性因子、 |
男性因子に分けると、2:1くらいの割合です。このような方々にさまざまな検査、治療 |
を行い、それでも残念ながら妊娠できないカップルが体外受精の適応となります。 |
|
体外受精―胚移植法は「これ以外の医療行為によっては妊娠成立の見込みがな |
いと判断されるものを対象とする」とされています。具体的には卵管性不妊、乏精子 |
症、免疫性不妊症、原因不明不妊症や不妊原因に対する治療を一定期間行っても |
妊娠に至らない難治性不妊症も適応となります。 |
|
しかし、この技術を用いても受精が起こらない症例が存在することも明らかになり |
(受精障害など)、さらに高度な治療技術である顕微授精が開発されました。 |
この方法では無精子症と診断された症例にさえ、精巣上体や精巣中から精子や |
精母細胞を見つけ出し、受精を成功させています。 |
最近では卵の培養液の改良も進み、卵を胚盤胞という、着床直前の段階にまで培養 |
できるようになり妊婦率の更なる向上や多胎妊娠の予防が期待されています。 |
|
|
治療法はどんどん発達してきているのですが、体外受精 |
などの不妊治療は費用がかかり、保険がきかないことも多く、 |
それが治療の妨げとなってきました。しかし、昨年4月から |
不妊治療の助成金制度がスタートし、わずかながら自治体 |
からの援助が得られるようになりました。 |
今後も私たち産婦人科医は患者さんと一緒に悩み、考え、 |
肉体的、経済的負担がより少ない援助で、妊娠、分娩が実現 |
するのを目標として日夜努力していきたいと考えています。 |
|
|